本論に戻す
悪質営業マンのあまりの急増ぶりに、飛び込み営業の法律規制が強化された。かつての飛び込み営業手法の多くは、法律違反になってしまった。
過去に許された営業手法でも現在は法律違反となり、裏を返せば「飛び込みセールスはするな」とも思えてしまう…。
この難問をクリアして、営業成績を増進できる手法の開発が必要となった。もちろん、法律違反しない正しいセールス法をまとめたのが本書である。
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世間話で次第お客様の心が開いてきたら、頃あいを見計らって本論に戻す。
これが次のステップである。
本論に戻すとは要するに、商談を再び展開することであるが、
ここではお客様の購入動機に沿った話を展開するのが大きなポイントとなる。
つまり、
「ああ、このお客様は経済性を重んじていらっしゃるのだな」
「利便性を求めているいらっしゃるのだな」
「耐久性に着目していらっしゃるのだな」
といったことを意識しながらセールスポイントを投げかけていくわけだ。
さて、この本論に戻す段階でも、失敗する道売れない道をたどる営業マンと、成功する道売れる道をたどる営業マンとがいる。
せっかくここまで商談が進んできたのに、失敗の道をたどった元も子もない。
そんなことにならない為にも、彼らがそれぞれどのようなセールスを行っているのかを学んで、しっかりとしたテクニックを身につけたいものである。
失敗する道をたどる営業マンはどういうことをしているかというと、そのほとんどがいきなり本論を展開している。
車のセールスで例えるば、
「ところでご主人、先程のお話では、今乗っていらっしゃる車、燃費が悪いということですが、ちょっとこれをご覧下さい」
とカタログを鞄から出して、
「その点、ダイハツのムーヴは燃費の良いことで評判なんですよ。
見て下さい、この表。
ほら、こんなにも優れているでしょ」
と、いきなりセールスポイントの説明を始めるのだ。これでは失敗する。
営業マンの中にはすぐにカタログを出して説明したがる人が少なくないが、何でもかんでもカタログを出して説明すればいいというものではないのだ。
そんなことをすれば、
「やっぱり車を売ろうとしているのか」
と、せっかく開きかけた心を壊してしまうだけである。
カタログを出すのはまだ先のことなのだ。
営業マンにとっては結果がすべてである。
どんなに話を聞いてくれても、どんなに世間話で盛り上がっても、結果に結びつかなければ全く意味がない。
そこで、結果を急ぐあまりついついカタログを出して本論に入ってしまいがちなのだが、これでは成功はおぼつかない。
では、どのように本論に戻したらいいのだろうか?
売れる営業マンはどうやっているのだろうか?
彼らは、売れない営業マンのようにいきなりセールスポイントを展開するのではなく、お客様の購入動機に沿いながらじわ〜っと誘っている。
例えば、
「ところでご主人、先程のお話ですと、釣りがお好きなようで、随分ご遠方まで行かれるということですが、
月に何キロぐらい走られますか?」
と質問して、まず事実を把握する。その時、
「だいたい1,000キロぐらいかな」
という返事が返ってくれば、
「ほお〜、1,000キロでございますか。月1,000キロ走ってリッター10キロ程度だと、ガソリン代も馬鹿になりませんねえ」
と続けるわけだ。
そして、仮にガソリンがリッターあたり100円などすると月のガソリン代は1万円になるわけだから、
「1万円でしたら、いろいろな使い方が出来ますね」
と問題意識を引き出す。
そして問題意識に目覚めたら、いよいよに誘うわけだ。
「そこでご主人、もし今ガソリン代が半分になるような車があったとしたら、いかがでしょう?」
これはあくまでも一般論である。
まだムーヴという固有名詞は出していない。
そういうものをいきなり出すと
「ああ、やっぱり」ということになるから、固有名詞は一切出さずに、
「ご意見を伺いたいんですが、もしガソリン代が半分になるような車があったとしたら、いかがですか?」
と打診をしてみるのだ。もちろん、いいに決まっている。
経済性を求めていることが分かっているのだから、悪い返事が返ってくるはずがない。
「そんなのがあれば、それはいいわな」
ここで追い打ちをかけるように、
「月に半分と言いますと、約5,000円節約出来るわけでございますね。」
と、問題意識を高める言葉を投げかけた上で、
「ご主人、月に5,000円ということは、
年間では6万円。
2年乗るとしましたら12万円、
5年では60万円の違いが出ますね」
とたたみ掛けて、さらにその重要性を痛感させるのだ。
この場合、2年という話で持って行くなら、
「車検代も浮きますね」
という話も出来る。こうやって問題意識を引き出したところで、
「ご主人、いかがでしょうか? 1度、本気でお考えなさいませんか?」
というようなかっ話をし、
「君、そんな車、あるのかいな?」
となったときに始めて、カタログを出すのだ。
このように、次はじわーっと誘導するのが、ポイントなのだが、
ここで大事なのは、お客様の関心事をできるだけでデフォルメすることである。
例えば、燃費のアピールにしても、先程は使用期間を1年、2年、5年と仮定して計算したが、
試用期間を長く設定すればする程、お客様の心を動かしやすくなる。
また、相手が会社で、月に1万円のガソリン代がかかる車を10台保有しているとすれば、
1万円×10台で、1ヶ月月5万円、1年で50万円、5年では250万円の差になる。
そこを強調すれば誰でも心動かされるというものである。
逆に、値段が高いとか燃費がかかり過ぎるというような話になったら、わり算をする。
例えば、1年で1万円も違うといわれたら、365日でわって、
「1日当たりわずか30円にもなりませんよ。」
「ご主人、健康になる方法を教えましょうか。 1日にたばこを二本節約すればいいんですよ」
といった話で持っていく。
要するに、掛け算と割り算をTPOに合わせて活用すればいいだけの話である。
こうして、お客様の感心どころに沿いながら、巧みに誘導して、本論につなげていくのがポイントなのだ。
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